⽂化の違いや⼈種の違いを経験。
患者さんの背景理解に

平湯 崚馬

渡航情報

国名

フランス

大学名(機関名)

ピカルディー・ジュール・ベルヌ大学

渡航期間

2019年8月25日~2019年9月17日

費用総額

約40万円

補助金

あり(滋賀医学国際協力会)

—— 海外へ行こうと思ったきっかけは?

 私はフランスのピカルディー・ジュール・ベルヌ大学提携の元、CHU amianという大きな地域中核病院で海外自主研修を行いました。
 海外に行こうと思ったきっかけとしては、異文化や異国の人種に触れ、その抵抗をなくしその文化に馴染む経験をすることで、万が一海外で働くことになってもこの経験が役立つに違いないと思ったのが第一のきっかけです。本学に在籍しながら海外に渡航しようと思ったことは多々ありますが、夏休みの期間も実習や部活等でまとまった休みを確保するのは難しく、今回実習で長期にわたり海外に行く機会があるということでぜひ利用したいと思い希望しました。

—— どうしてこの国を選びましたか?

 では、何故渡航先にフランスを選んだのかという話になるのですが、本当は英語圏のアメリカやカナダに行きたいと思っていました。なぜなら多くの英語圏の先進国には日本よりも優れた医療技術があり、日本では見られないような大規模な病院が多くあるイメージがあったからです。しかし、残念ながら自分が希望していた実習先は、その年度の滋賀医科大学との提携が困難になることが多く、結果的に先進国でありつつ、在学中に第二外国語として選択したフランスを選びました。

—— 留学準備の中で特に気を付けたことは?

 他国の場合だとワクチン接種が必要な国もありますが、フランスは特に準備で気を付けることはありませんでした。留学準備の際はパスポートの更新や、渡航時の宿泊先の予約、学内の先生からの推薦状など、周囲と同じ準備を期限内に行っておけば良かったと記憶しています。

—— 海外で具体的に何をしましたか?(研修内容)

 フランスでの実習内容としては、それぞれ事前に希望した診療科に配属され、その診療科で実習をしている研修医または医学生に同行し、医療行為を観察するというものでした。フランス人は思った以上に英語に疎く、日本人の自分よりも英語になじみのない方がほとんどでした。
 私は、研修医の病棟回診に毎日同行し、研修医とともに患者の身体診察を行っていました。その後は研修医室で電子カルテの記入を行い、各種検査依頼や検査結果の考察、退院の調整などあらゆる病棟業務を行う様子を見学しました。私の場合は小児循環器と呼吸器の分野を見学させていただいたので、循環器分野の検査見学や、外来の診察にも同行することができました。コメディカルのスタッフと交流する機会もあり、医療スタッフと医師の連携の様子を知ることができました。

—— 海外で具体的に何をしましたか?(研修以外)

 実習以外の時間はあらゆるヨーロッパの地域を旅行し観光していました。入国後実習が始まるまでの一週間はフランスとドイツの国境近辺を旅行していました。ストラスブールを拠点にコルマール、リクヴィルといった建築物の美しい街並みを楽しみ、ドイツ国境を自転車で渡りました。実習が休みの日はフランス中心地のパリ市街まで電車で行き、街中を自転車で観光していました。市内ではアジア人に対してスリを仕掛けてくることが多いので、徒歩や地下鉄ではなく自転車で基本的に移動していました。実習終了後はフランス東部、南部、スペイン国境付近を観光しました。モンサンミッシェルは日本人観光客に人気らしく、実際フランスではあまり見かけなかった日本人を多く見かけました。マルセイユは地中海沿岸の都市で、船で地中海を回遊し、海で泳ぐこともできました。

—— 海外へ渡航したことで、得たものはありますか?

 海外へ渡航したことで、得たものとしては、関わった患者さんについての臨床的な知識と、異国で過ごすことへの抵抗感が思ったより少なかったという発見です。
まず、臨床実習で関わり、医学的に学び学習した疾患については以下にまとめます。
(1)呼吸器系:喘息、脊髄髄膜瘤、咽頭硬化症、マラリア、百日咳、嚢胞性線維症
(2)循環器系:大動脈弓肥大、右心室肥大、左室性頻脈、大動脈弁部分欠損
(3)神経系:ミオクローヌス、頭蓋内多嚢胞性奇形、顔面神経麻痺、梨状筋症候群

 自分はこの実習を通じて、日本とは違う国民性に触れて外国人に対する抵抗をなくすことを目的の一つにしていました。しかし、思ったよりも国民性の違いは感じず、フランス人やその他ヨーロッパの国々の方々には日本人よりも親しみやすさすら感じました。彼らの感情表現はストレートで分かりやすく、日本人のような社交辞令もなく、初対面の相手に対しても快く受け入れてくれる懐の深さに感動しました。

 自分にとって、今回の実習で見聞きした専門的な医学知識はまだ触れたことのないものばかりで、言葉の違いもあって理解できないことも多かったです。けれど、今回の実習は自分の勉学に対するモチベーションの向上に大きく貢献してくれました。海外での交流を通じて感じた刺激を忘れることなく、残りの学生生活に生かしていきたいと思います。

 人生でこれほど長い時間日本を離れたのは初めてだし、これほど日本から遠ざかったのも初めてでした。ですが、意外と生活には慣れ、異国に対する心理的な障壁はなくなりました。医師になってしまうと長期休みは取れなくなってしまうので、このような長期で海外に行く機会は学生のうちにしか経験できないと思います。そのため、少しでも利用したいと思う方はぜひ海外に行って、その文化の違いや人種の違いを経験してきてほしいです。
きっとその経験が自分の新しい価値観となり、将来医師になった際にも患者さんの背景理解などで役に立つ時が来ると思います。皆さんが海外でかけがえのない経験ができるよう心からお祈りいたします。